STってどんな人?どこで出会う?私がSTになったきっかけ
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
STの仕事に興味のある方、
これからSTを目指す方向けに、
私がどうしてSTになったのか、
少し紹介したいと思います。
【この記事の要点】
〇小学生の頃から吃音に悩み、人前に立たなくて済む仕事に就きたかった。
〇就職難の時代に、他人とは違う資格を取りたかった。
〇STに向いていないと思えても、続けさえすれば結果は出てくる。
<もともとは人前で話すような仕事に就きたくなかった>
私が初めて
STという仕事を知ったのは、
小学生の時でした。
その頃、
重い吃音の症状が出ていた私は、
人前で話す事を極端に恐れ、
すでに将来の仕事にも不安を感じていました。
TVで検品作業のアルバイトを見て、
これなら自分にもできると考えていました。
親や親戚も心配していたのでしょう。
吃音治療のため、
母親に連れられ、
某総合病院に通院していました。
そこで
私の言語治療を担当していたのが、
STの先生でした。
当時はまだ国家資格ではなかったため、
言語療法士と
名乗っておられたと思います。
通院したのは数か月だけでした。
その後も
吃音に苦しめられることは多々ありましたが、
STの治療を再び受けることはありませんでした。
たぶん、
忘れていたこともあるのでしょうが、
病院に通うのが面倒くさかったのもあると思います。
他人と話す事を避けていた私にとって、
吃音の治療はもうどうでもいいことでした。
<リーマンショックで就職難!?他人とは違う資格を取りたかった>
そうこうしている内に
大学受験を迎える歳になり、
進路に悩むことになりました。
この頃、
私は特にやりたいことも無かったため、
とりあえず親の勧める法学部を志望していましたが、
何となくしっくりきませんでした。
ある日、
予備校の模試で志望校コード一覧を眺めていると、
”社会福祉学部”という文字が目に留まりました。
この時、ハタと閃いた考えがこうです。
「そうだ!やりたいことが見つかるまで、
何か人の役に立つことを勉強していれば、
後でいろいろ都合がいいんじゃないか!?」
今考えたら、
世間体を気にした
小賢しい理由のような気もしますが、
とにかく
この選択が最初のターニングポイントになったと思います。
希望通り、
福祉学科のある大学に通うようになって
しばらくしたある日、
講義一覧を眺めていると、
”吃音”という文字が目に留まりました。
これにはさすがにびっくりしました!
普通に生活していて、
吃音という言葉に出会う機会があるとは
考えもしなかったのです。
その講義を担当されていた講師の方は偶然にも、
私が小学生の頃にSTの先生に紹介されて通っていた、
セルフヘルプグループのメンバーの方でした。
世間って狭いものです。
数年ぶりに自分の吃音にも向き合うきっかけにもなり、
就活の時の自己分析にも大いに役立ちました。
その就活で、ターニングポイントを迎えます。
当時は就職難で、
何か資格をとるために専門学校へ通う学生が
少なくありませんでした。
私もその流れに乗ることにしましたが、
さて、なんの資格を取るべきか…
周囲に勧められたのはOT(作業療法士)でした。
「私の性格に合ってる」と思われたらしいです。
しかし、
「どうせなら、自分にゆかりのある資格にした方が面白そうだ!」
と思った私は、
吃音を専門にできる仕事、
つまり、ST(言語聴覚士)を志望しました。
リハビリ職の中でも、
STは成り手が少ないマイナー職でした。
しかも、
吃音をやるSTはその中でもさらに希少でした。
どうやら私は、
大勢の人と同じことをするより、
少人数の中で目立つことをやりたがるみたいです。
小学生の頃、
人前で話すことを恐れていたのに、
自分の本当の欲求は他人と話すことにありました。
<この仕事向いていないと思っても、続けさえすれば何とかなる>
それまで、
自分に吃音があることをあまり積極的に話はしなかったのですが、
STを目指すようになってからは
堂々とカミングアウトするようになりました。
見方を変えれば態度も変わるものです。
吃音は私にとってハンディではなく、
働くためのアイデンティティになりました。
しかし、
いざリハビリの練習を始めると、
やはり吃音は不便でした。
それまで他人と話すことを避けていたこともあり、
患者さんと何を話していいのか
まったくわかりませんでした。
「自分は一番STに向いていない」
「自分がSTになるなんておこがましい」
そんな気持ちを抱えながらも、
辞める勇気もなく、
とにかく前進するしかありませんでした。
しかし、
続けていると、価値観は変わってきます。
慣れてくると、
自分なりのリハビリを組み立てることができるようになりました。
吃音で悩んだからこそ、
言葉の障害を抱える患者さんの気持ちもわかる。
自分だからこそできる仕事に出会えた、
と思えるようになりました。
STデビューした数年後、
ある学会で、
私が最初に出会ったSTの先生に再会できました!
その時、
「あの時の子が、
今度は仲間になってくれたんやね。
いっしょに頑張ろう」
と言ってもらえ、素直に嬉しかったです!
いかがでしたでしょうか?
私の場合は、
自分の吃音がSTを目指すきっかけでしたが、
身内の方がSTのリハビリを受けていたので、
STを目指した方も多いようです。
スタートはマイナスからだった私ですが、
今はSTになって良かったと思えています。
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