言語聴覚士が50年近くも国家資格化が遅れた理由

こんにちは!

言語聴覚士(ST)の喜志です。


ここ最近、

大御所の言語聴覚士の先生方がお話される際に、

言語聴覚士の源流について

話をされる場合が

多く見受けられます。


大御所の方々は、

そろそろ引退される方もいらっしゃるので、

自分達の知見を後続に継承する事を

意識しておられるのでしょうか。


経験年数10年に満たない自分としては、

大御所の方々との知識・技術の差が

嫌というほど身に沁みます。


と、同時に、

自分の資格がどのような成り立ちをして
現在に至るのか、

興味が沸きます。


言語聴覚士の国家資格は

1997年に誕生しました。

しかし、

実際に
言語聴覚療法と呼ばれるセラピーが
国内で活躍しだしたのは、

戦後しばらくしての事だと聞きます。


何故、

半世紀以上も国家資格化が遅れたのか!?

その理由について
書いてみたいと思います。

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〈国家資格化は誰もが望んだ事〉

国家資格化される前の
言語聴覚士は、

大変な環境下で働いていたそうです。

医療・福祉・教育の分野で働くには、

専門性を認められた
資格を有している方が、

断然有利です。


特に病院は、

資格を持っている事が
当たり前です。

診療報酬として
認められる行為は、

国家資格を持つ者にしか
できません。

医療行為を認められているのは
医師だけですが、

他の資格は医師の指示の下、

診療の補助行為が
認められています。

これによって
診療報酬を得る事ができます。


つまり、

"国家資格を持っていないと
お金を稼げない"

というわけです。


当時、

「言語聴覚士を雇った病院は

赤字になる」

等と揶揄されたそうです。


その頃の言語聴覚士は、

経営上不利な立場を承知の上で、

自分を雇う事で
病院にどんなメリットがあるかを

飛び込み営業で力説していたとか。


言語聴覚士としては雇用してもらえず、

事務員として職場に置いてもらい、

リハビリに従事していた方も
おられたそうです。


同じリハビリ専門職である、

理学療法士・作業療法士が、

戦後早期に国家資格化され、

病院で確固たる地位を築いたのとは裏腹に、

言語聴覚士の待遇は低いものでした。


国家資格化し、

自分達の地位を向上させる事は、

当時誰もが望んだ事であったでしょう。



〈質or量で二分される時期が続く〉

当時、

言語聴覚士の国家資格化を目指す
2つの団体がありました。

両者は
国家資格化の目標がやや異なり、

一方が
極めて質の高い国家資格
を目指したのに対し、

もう一方は
十分な数の担い手を見込める国家資格
を目指しました。


もともと、

日本の言語聴覚士は

アメリカのSLP(言語病理士)を
目標にしてきました。


しかし、

大学院の修士課程を経ているSLPと
同じレベルを目指すと、

ごく一部の限られた者しか
担い手として見込めません。

多少レベルを下げてでも、

早急に国家資格化し、

広く門戸を開けて担い手を集める。


このような
"質と量"とも言える論争は、

永きに渡って続き、

言語聴覚士の国家資格化が

半世紀近く遅れる一因となりました。



自分達の資格が
どのような経緯を経て
誕生したのか?

若手の言語聴覚士は、

その事について知っておいて

損はないと思います。



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