胃瘻は絶対悪なのか!?食べられなくなった時に迫る選択とは?
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
"胃瘻"
という言葉をご存知でしょうか?
口から食べられなくなった方が
栄養を摂るための手段として、
簡単な手術で腹部に穴を空け、
胃に直接
流動食を注入する方法です。
言語聴覚士は
口から食べる事の障害
"摂食嚥下障害"
を専門に扱うので、
胃瘻のような代替栄養手段には、
業務上よく関わります。
胃瘻ときくと、
最近はなんとなくネガティブな
イメージを抱く方が多いと思います。
今回は、
口から食べられなくなった時に、
日本の医療では
どのような選択肢があるのか
紹介したいと思います。
〈代替栄養手段の変遷〉
旧来では、
代替栄養手段と言えば
点滴だったのですが、
消化器官を使用できるというメリットから、
胃瘻が推奨されるようになりました。
胃瘻の状況が変化したのは、
平成の中頃と聞きます。
日本老年医学が、
胃瘻が乱用される現状に異を唱え、
「延命のための胃瘻の選択は慎むべき」
と訴えたのです。
それがメディアに
大々的に取り上げられ、
"胃瘻=悪"
という単純なイメージが
世間で持て囃されるようになりました。
それまで、
「胃瘻は消化器にとってメリットが大きい」
と進んで導入されていましたが、
患者や家族が
胃瘻を極端に避けるようになり、
胃瘻の選択は
控えられるようになりました。
近年では
胃瘻に代わる代替栄養手段は、
従来から用いられる点滴と、
鼻から管を挿入して
胃に直接流動食を注入する
経鼻経管栄養です。
口から食べられなくなると、
主にこの3種類から
代替栄養手段を選択する事になります。
〈各代替栄養手段の特徴〉
それぞれの
メリットとデメリットは
どうなっているのでしょうか?
点滴は、
その場ですぐに実施できる事が
メリットですが、
細い血管に針を刺して
負荷をかけ続けるため、
長時間の使用は出来ません。
一度に注入できる栄養量も
ペットボトル1~2本分のスポーツドリンク程度が限界です。
当然、消化器は使用されないので、
胃や腸は衰えていきます。
経鼻経管栄養は、
胃に直接流動食を流すので、
消化器を使用して十分な栄養量を
摂る事ができます。
反面、
鼻に管を挿入する時に苦痛を伴い、
管を入れっぱなしにされる事による
不快感や見た目の問題が付いて回ります。
自分で管を抜いてしまう患者もいるため、
やむを得ず両手にミトンをつけて
拘束する場合もあります。
また、
鼻から入った管は
本来閉じている食道を
無理にこじ開けて
胃まで通しています。
この隙間から胃粘液が逆流したり、
食道を閉じる機能が慢性的に衰える可能性もあります。
何より、
口から食べる練習をする上で
この管は嚥下のジャマをします。
対して
胃瘻
の場合はどうでしょう?
鼻や食道に管を通すことなく、
必要な栄養量を
消化器を使って摂る事ができます。
自分で管を抜く心配もないので、
拘束する必要もありません。
デメリットとしては、
手術が必要という事でしょうか。
医者曰く、
そんなに難しい手術じゃないらしいです。
比べてみると、
胃瘻は登場して1番新しい事もあり、
点滴や経鼻経管栄養の課題を
うまくカバーしているのが分かります。
〈最も良い手段は何なのか〉
結論から言うと、
最も効率が高いのは
胃瘻ですが、
臨床は千差万別なため、
一概に良い悪いと判断出来ません。
STの立場から理想を語るならば、
こちらで紹介したケースのように
まず
胃瘻を作って必要栄養量を確保し、
その間に嚥下リハビリを続けて、
段階的に経口摂取へ移行していき、
最終的に胃瘻を抜去する。
という形が理想的ですが、
あくまでも一般論です。
これに当てはまらないケースも
もちろん想定すべきです。
場合によっては、
こちらのケースのように、
胃瘻を選択する事で
結果的にさらに大きな目標を達成できる場合もあります。
〈まとめ〉
私達専門家は、
自分達の臨床において
個々のケースで最大限の成果をあげる事が
求められます。
それと同時に、
「こうした事で、
患者にとって良い結果となった」
という成功例を
学会等を通じて世の中に伝えていく必要もあるでしょう。
また、
患者や家族の立場からすると、
胃瘻が全て悪いのではなく、
”各々の手段にはメリットとデメリットがあり、
それぞれ選択できる"
という事を知っておけば、
より納得のできる選択ができるのではないでしょうか。
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