言語聴覚士の仕事~胃瘻になっても口から食べる事を諦めない~
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
STが普段どのような仕事をしているのか
実際の事例を紹介してみたいと思います。
私が過去に経験した事例を元に
記事を書いておりますが、
個人情報保護のため、
できるだけ事実を変えずに
一部内容を修正しておりますので、
ご理解ください。
〈脳梗塞で食べれなくなり、胃瘻を作ったAさん〉
Aさんは60代の男性です。
自宅で突然半身が動かなくなり、
救急車で病院に搬送されました。
病院についた時にはすでに意識はなく、
ついた診断は脳梗塞。
集中治療室で治療を受け、
寝たきりの状態となりました。
意識のない間は口から食べることができません。
Aさんは点滴で栄養を摂っていましたが、
どんどん痩せていきました。
意識が回復してからも重い麻痺が残り、
長期間絶食が続いたからか、
久々に口から食事を食べると
激しくむせ、
その日のうちに誤嚥性肺炎を発症しました。
医師から口から食べることは困難と言われ、
応急処置として、
鼻から管を入れて流動食を直接胃に注入する
経鼻経管栄養が行われました。
Aさんはリハビリも始めていましたが、
嚥下のリハビリは思うように進まず、
医師からは胃瘻を勧められました。
とにかく鼻に入った管を抜きたかったAさんは
家族と相談し、
胃瘻を作る手術を受けることに決めました。
栄養を胃瘻で摂るようになったAさんは、
病院からは「栄養は心配ない」と言われましたが
口から食べることを諦めきれず、
嚥下リハビリを受けることができる回復期リハビリテーション病棟へ
転院することにしました。
そうしてAさんは、
発症してから1ヶ月半ほどして
私のいる病院に入院してこられました。
〈胃瘻で栄養を摂りながら、口から食べる訓練を進める〉
Aさんは
胃瘻を作る前に嚥下の検査を受けておられ、
その結果、
口から食べることは困難と判断されたそうです。
しかし、
嚥下検査は絶対基準のものではありません。
検査を受けた時の状態によっては、
本来の能力が発揮できないこともあります。
(詳しくはこちらの記事をご参照ください。)
Aさんは発症前から10kg近く痩せておられ、
とにかく体力がありませんでした。
栄養が足りなければ、
筋力は向上しません。
嚥下も当然筋肉の運動なので、
痩せている状態では改善乏しいと考えられています。
私は
管理栄養士と相談し、
胃瘻から必要十分な栄養量を摂れるように
流動食の内容を調整してもらいました。
そして、
理学療法士(PT)
作業療法士(OT)
と総合的な身体能力の向上を目指し、
体力増強を目的とした訓練メニューを組みました。
身体運動のリハビリに関しては、
STよりもPT、OTの方が専門分野です。
運動療法はあちらに任せて、
私は水を使って
可能な限り誤嚥のリスクを下げて食べる方法を探しました。
〈ついに口から食べる事を達成〉
1ヶ月以上リハビリを続け、
Aさんの体重は徐々に増えていきました。
痩せ細った身体も肉付きがよくなり、
身体能力も向上していきました。
今なら、口から食べられるかもしれない。
主治医と相談し、
Aさんに再び嚥下検査を受けてもらうことにしました。
Aさんと練習した食べる方法で嚥下検査を受け、
結果は
”経口摂取開始可能”
Aさんはおよそ3ヶ月ぶりに、
口からお粥一杯を食べ始めました。
そこからは段階的に、
食べる量を増やしていきます。
1日1食から2食→3食
お粥一杯からおかずを1品→2品
そうして1ヶ月ほどかけ、
Aさんは
3食を口から食べれるようになり、
胃瘻を使わなくてもよくなりました。
使用しなくなった胃瘻は、
お腹にハメた型を抜けば
数日で塞がります。
Aさんが4ヶ月の入院を終え、
自宅に向けて退院される頃には、
胃瘻を使って流動食を注入していた頃の面影は
ほぼありませんでした。
〈胃瘻になっても口から食べることを諦めない〉
世間では、
「胃瘻になれば二度と口から食べられない」
といった風潮があります。
しかし、
Aさんのように
胃瘻を選択したことによって
リハビリが滞りなく実施でき、
結果
口から再び食べられるようになる場合もあります。
また、
胃瘻を選択したことによって
口から食べられなくても
本人と家族が「良かった」と思えたような例もあります
(こちらの事例を参照ください)
口から食べられなくなった時にどうするか?
今の時代は複数の選択肢があります。
胃瘻について、
詳しくはこちらの記事もご参照ください。
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