言語聴覚士の仕事~胃瘻を選択する事で患者家族が得たものとは~
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
STが普段どのような仕事をしているのか
実際の事例を紹介してみたいと思います。
私が過去に経験した事例を元に
記事を書いておりますが、
個人情報保護のため、
できるだけ事実を変えずに
一部内容を修正しておりますので、
ご理解ください。
〈脳出血で食事に2時間かかるようになってしまったHさん〉
Hさんは50代の男性です。
奥さんと離婚されてから、
男手一つで娘さんを育ててこられたそうです。
Hさんは、
自宅で娘さんの目の前で倒れたそうです。
すぐに救急車で搬送されましたが、
脳内の出血量が酷く、
Hさんの意識は長らく戻りませんでした。
ようやく意識が戻りましたが、
Hさんは声も出せず、
歩くことも出来ず、
自分では何一つ行うことができなくなりました。
重度の”高次脳機能障害”が
後遺症としてHさん一家を苦しめることになりました。
リハビリ目的で
私のいる病院に転院されてきた時、
Hさんは絶食状態でした。
救急病院では、
嚥下のリハビリどころではなかったのです。
嚥下検査を受けてもらいました、
Hさんは自分で噛むことも飲み込もうとされず、
結果、
「窒息リスクのため固形物は摂取困難」
と判断されました。
Hさんの食事は開始されましたが、
どろどろに溶かしたブレンダー食です。
それを介助してもらって食べなければなりませんでした。
Hさんは大柄で、
必要な栄養量も多かったため、
かなりの量のブレンダー食を食べなければなりません。
それも、
自分では飲み込もうとされないため、
あの手この手で飲み込みを促さなければなりません。
Hさんの食事は2時間以上かかりました。
〈家族は自宅へ連れ帰る事を決意〉
3ヶ月リハビリを続けましたが、
Hさんは緩やかに改善しているものの、
全ての動作に介助が必要な状態は変わりませんでした。
「この状態で家に帰ることは不可能だ」
医療チームのメンバーはそう考えていました。
しかし、
娘さんはどうしても父親を家に連れて帰りたいと主張しました。
若年の家族の自宅介護は、
想像以上の苦労が一生続きます。
場合によっては、
家族全員で潰れてしまうことも有りえます。
私達は娘さんと何度も話し合いを重ねましたが、
娘さんの決意は変わりませんでした。
ならば、
使える手段、
利用できるサービスは
全て使って、
Hさんの安全と娘さんの希望を叶える方法を探そう
医療チームはそう結論付けました。
たいていの介護は
ヘルパーサービスを利用するなどで対応できましたが、
2時間以上かかる食事を
なんとかしなければなりませんでした。
しかも、
食形態はブレンダー食です。
一般家庭で作るにはかなりの手間がかかります。
私は、
Hさんの好物を娘さんに聞いて、
少しでも窒息リスクを下げて食べる方法を探しました。
その結果、
Hさんは少量なら
好きなおかずを食べることができました。
しかし、
それだけでは栄養が足りません。
医療チームで会議が続きました。
「口から量を食べることが難しいなら、
栄養は胃瘻で摂るようにして、
本人の好きなものだけ口から食べてはどうだろうか。」
娘さんを交えて相談に相談を重ね、
そのような結論に至りました。
Hさんの食べなければならない量はごく少なくなり、
娘さんが介助して好物を30分かけて好物を食べるようになりました。
あとは、
胃瘻で流動食を注入します。
30分の食事時間が、
娘さんにとって、
お父さんのために自分がしてあげられる時間になりました。
〈胃瘻の選択が不幸とは限らない〉
退院を控えたある日、
食堂でHさんと娘さんが食事をしておられました。
Hさんの好物を娘さんが食べさせながら、
娘さんが思い出話をHさんにしていました。
Hさんは自分でことばは発しませんが、
娘さんが語りかけると少し表情をかえます。
二人にとって、
感極まる話題だったのでしょう。
娘さんが涙ぐんで喜ぶと、
Hさんも同じく涙ぐんでいました。
胃瘻を選択すると、
二度と口から食べられなくなる
という風潮があります。
しかし、
胃瘻の選択が、
その人にとって不幸なことであるとは限らない。
私はそのことを、
Hさんと娘さんから学びました。
胃瘻を選択したことによって
リハビリが滞りなく実施でき、
結果
口から再び食べられるようになる場合もあります。
(こちらの事例を参照)
口から食べられなくなった時にどうするか?
今の時代は複数の選択肢があります。
胃瘻について、
詳しくはこちらの記事もご参照ください。
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