吃音の診療窓口は何故増えないのか!?
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
私は普段、
通常のリハビリ業務を行いながら、
時々吃音の専門外来も担っています。
吃音を診ている病院は
全国でも珍しいと言われています。
私の勤める病院は
回復期リハビリテーション病棟と
医療療養病棟の併設、
つまり、
リハビリテーションの専門病院です。
そのような病院では、
普通、
吃音のような
マイナーな障害の診療など
やっていません。
私が吃音外来を立ち上げた経緯については
こちらの記事でも書いた通りです。
〈吃音外来を立ち上げたのに専門外!?〉
私にとって、
吃音の臨床は
ライフワークとも言えます。
吃音をやりたくて言語聴覚士になった
珍しい人間です。
(私が言語聴覚士になった経緯はこちらの記事を参照)
そんな私も
念願の吃音外来を立ち上げて、
5年以上が経ちました。
当初、私は
「5年も経てば、
病院も吃音に慣れてくるだろう」
と考えていました。
ところが実際、
いつまで経っても病院側は
"吃音は専門外"
という認識から抜け出せていません。
つい先日も、
吃音の問い合わせを受けましたが、
断腸の思いでお断りしました。
所属長から許可が下りなかったからです。
「うちの医師は循環器内科が専門だから、
専門外の吃音を積極的に受け続けると
医師の負担が増す。」
というのが理由でした。
「どうしても他所で診てもらえないなら
うちで診るけど、
そうでないならきちんと専門の病院で診てもらえ。」
とのことでした。
いったい、
吃音の専門の病院なんて、
世界中探していくつあるのでしょうか!?
〈健康保険の診療は全て医師の判断という制約を受ける〉
健康保険を使う診療は
全て医師の責任のもとに行われます。
医師は指示を出した医療行為の結果に対し、
全ての責任を負うのです。
したがって、
医師は責任の所在に関するリスクマネジメントを
念入りに行います。
それぞれの医師には得意とする専門分野があるので、
専門外の領域については安易に判断しようとしません。
吃音は特に不人気な分野であり、
ほとんどの医師にとっては専門外です。
故に、
医師は専門外の吃音を診ようとしません。
いくら吃音に強い言語聴覚士が病院にいようと、
医師が診察してくれなければ、
私達は介入出来ません。
”吃音を診る言語聴覚士の不足”
それ以上に
”吃音臨床に関わろうとする医師の不足”
これが、
日本で吃音の診療窓口が増えない理由だと
私は考えます。
この解消には、
医師の世界で
吃音の啓発を進める事が必要ですが、
なにぶん不人気分野であるため、
よほど吃音に思い入れのある医師しか
注目してくれません。
医師の協力を得るぐらい信頼される
言語聴覚士を増やす事も考えられますが、
こちらも
言語聴覚士の中でさえ吃音は不人気分野であり、
しかも
医師と対等に話せる言語聴覚士とは
かなりの実力者である必要があるため、
すぐに増やせるものではないでしょう。
あとは、
健康保険に縛られない自費診療で
吃音を診る方法が考えられますが、
歴史的に吃音は
中身の薄い高額な民間療法が
蔓延っていたので、
いかに利用者から信頼を得ることができるか!?
という事が課題となります。
ただ、
健康保険の縛りがある限り、
吃音の窓口が急増する事は難しいと思います。
私としては、
従来の病院診療でも
科学的根拠の乏しい民間療法でもない、
ネットを駆使した
新しい自費診療の在り方を
近い内に作り上げたいと考えています。
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