吃音への対処法は!?ネットの情報がバラバラな理由
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
私は病院で
吃音の専門外来を担当していますが、
私自身にも吃音があります。
つまり、
私は吃音の当事者でありながら、
吃音の臨床家でもあります。
私のように
吃音をもつ言語聴覚士は、
たまに公の場でも見かけるので、
意外と一定数存在するのかもしれません。
吃音の当事者による視点と、
実際に吃音臨床に携わる専門家の視点を
併せ持つ事は、
私にとっては
他所にはない長所であると考えています。
今回は、
実際に臨床場面で
クライアントから訊かれた疑問について
私の見解を述べたいと思います。
〈どうしてネットで調べた吃音の情報はバラバラなの?〉
ネットで吃音について調べると、
非常に多くの情報がヒットします。
現在のGoogleは公式ページを優先的に上位表示するらしく、
最初に目につくのは
研究機関やクリニック、
言語聴覚士のような
吃音の専門家が書いた記事などです。
これらのページに書かれている内容は、
主に吃音の疫学的情報です。
細かい表現に差異はあるでしょうが、
ほとんどは同じような内容で、
「吃音とはこういうモノですよ」
という内容にとどまります。
ところが、
吃音の治療方法や訓練方法については、
公式ページでさえ、
統一された内容はありません。
ましてや
民間の治療方法紹介ページや
個人のブログなどは
「こうすれば吃音は治る」
などと断言するものから、
「吃音は治らない」
という内容まで様々です。
これには、
吃音が未だ原因不明の障害である
という事情が関与しています。
吃音を引き起こす根本的な原因は不明であり、
俗に云う
「親の吃音が子供にうつる」や
「育て方が悪かった」などは
全く根拠がありません。
有力視されている説は、
「何らかの遺伝的要因と
環境要因とが合わさって、
発吃に至る可能性がある」
というものです。
わかっているのはその程度です。
原因がわからないのですから、
当然吃音の根治療法は存在しません。
今あるものは、
吃音に対する対症療法になります。
対症療法は
いわゆる治療仮説に基づいて行われるので、
治療者がどのような仮説に基づくかによって
アプローチが異なります。
要するに、
治療者が
"吃音の改善"をどのように考えるか?
という事で、
それぞれの主張が変化するわけです。
吃音の改善を
「どもらずに流暢に話す」
と考える人もいれば、
「どもっても自分らしく話す」
と考える人もいます。
「吃音は治らないから上手く付き合っていくしかない」
と考える立場もあります。
これらは全て対症療法なので、
どれも間違いではありません。
ネット上に溢れる吃音の対処法は、
吃音者自身の体験談によるものも多く、
悪く云えば
「自分の吃音観の押し付け」
とも言えます。
病院で行うような訓練方法にしても
今はまだ統一見解はありません。
というより統一見解なんて出せるのか!?
ってぐらいに臨床家同士でも意見が割れています。
吃音の当事者にとっては、
ただ混乱するだけです。
ネットに限らず、
吃音の治療方法について
当事者が考えるべき事は、
「相手が言う"吃音の改善"に
自分が満足できるか?」
ということだと
私は考えます。
結局、
吃音に関係なく、
自分自身の人生です。
普段の生活を送るのは私達臨床家ではなく、
当事者自身です。
自分が生活で困っているなら、
誰が何と言おうが吃音は治っていません。
自分がすでに困らないなら
吃音は治っています。
その手段が何であれ、
結局は自分がどうなるかが全てです。
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