吃音を治す方法は?専門家が行う訓練方法
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
吃音に関する質問で
最も多いものの一つが、
「どうすれば吃音は治るのか?」
についてです。
吃音には悪化要因と改善要因があり、
悪化要因が増えれば吃音は悪化し、
改善要因が増えれば改善します。
したがって、
悪化要因を減らしつつ、
改善要因を増やしていくと
最終的に吃音は治ると仮定されます。
<吃音の治療法の実際>
吃音の治療法には様々なものがありますが、
現在ある治療法は全て対症療法です。
何をもって吃音の改善とするか、
どのような治療理論に基づくかによって
求められる対応や効果が変わってきます。
ネット上に様々な情報が蔓延っているのは
そのような事情によるものです。
病院で吃音の臨床を行う専門家の間でさえ、
意見は割れています。
ただ、
極端に分類すると
直接法
と
間接法
2種類の対応方法に大別される
と考えています。
それぞれ、
吃音の治療理論や
改善をどのように捉えるかが
異なります。
<すぐに効果を実感したい人向けの直接法>
その名の通り、
実際に声を出して練習することで、
吃音の症状を改善させる方法の総称です。
古典的な方法では、
楽にどもりながら話す”吃音緩和法”
流暢な話し方を実現させる”流暢性形成法”
などがあります。
種々の方法を用いて吃音の症状を抑制し、
コミュニケーション場面の問題を
克服しようと試みます。
最大の特徴は、
訓練場面で練習して、
すぐに効果が実感できるという
即効性でしょう。
「来週面接があるのから、
自己紹介をスムーズに言えるようにしたい」
というように
ピンポイントで改善したい方には
有効な方法かもしれません。
ただ、
直接法は常に効力を
発揮し続けるわけではなく、
場合によっては
効果がなくなることもあります。
苦労して練習を続けても
効果が長続きしない、
効果が実感できない、
といったように、
日常へ汎化し難いことも
直接法の特徴です。
直接法で吃音を治す場合は、
練習したテクニックを駆使して、
日常のコミュニケーションを行うことで、
吃音の悪化要因を減らし、
改善要因を増やしていくことになります。
最終的に
テクニックを使わずに
話せるようになれば最高ですが、
全ての人が
そこまで到達できるわけでは
ありません。
<吃音の苦悩から解放されたい人向けの間接法>
直接法に対して、
声を出して練習しない訓練方法を
間接法と呼びます。
もともと
この呼び方は、
都筑澄夫先生が考案された
年表方式のメンタルリハーサル法を
指すものでしたが、
昨今注目されている
認知行動療法なども
広い意味では
間接法と呼べるのではないか
と考えます。
声を出して練習しない
という点が注目されがちですが、
最大の特徴は
吃音の症状を必死にコントロールすることを止め、
自分の思ったことを自然に話すことにあります。
いわば、
吃音者意識からの脱却です。
吃音の症状を抑えるテクニックではないため、
当然
即効性はありません。
栄養と同じで、
毎日コツコツ続けることで
徐々に効力を発揮します。
間接法で治す場合は、
日頃の行動を変えることで
吃音の悪化要因を減らし、
吃音でない人と同じ発話行動をとることで
改善要因を増やしていきます。
年表方式のメンタルリハーサル法の場合は、
3年訓練を続けた改善率が
72%と言われています。
<結局どちらの方法がいいの?>
直接法も
間接法も
どちらも吃音の改善には有効です。
しかし、
両方を併用することはできません。
目的が正反対であるからです。
私は
STとしてデビューするまで
ずっと直接法の勉強をしてきましたが、
都筑澄夫先生が主催する研修を受講して、
間接法もできるようになりました。
自分の吃音外来を立ち上げて
5年以上になります。
その間、
一度も直接法で訓練はしていません。
クライアントと
最初に話し合う段階で、
ほぼ皆さんが
間接法を選択されます。
細かなテクニックの習得よりも、
本当の意味で
「吃音の苦悩から解放されたい」
と願う方が多いということではないかと
私は考えています。
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