言語聴覚士の仕事~吃音を専門で扱う唯一の資格~
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
STが普段どのような仕事をしているのか
実際の事例を紹介してみたいと思います。
私が過去に経験した事例を元に
記事を書いておりますが、
個人情報保護のため、
できるだけ事実を変えずに
一部内容を修正しておりますので、
ご理解ください。
STの仕事の多くが
脳卒中後の言語及び高次脳機能障害と
摂食嚥下障害への対応です。
ほとんどのSTが病院で
脳や嚥下のリハビリ業務に従事しています。
しかし、
いわゆる少数派ですが、
より専門性の高い臨床に特化した
STもいます。
小児の言語発達領域、
音声障害領域、
聴覚障害領域、
そして吃音です。
このうち、
少数派の中でも
さらに少ないのが吃音です。
実際、
STの間でも
「吃音って何やってるかわからない」
と言われています。
そんな
得たいの知れない!?吃音の
リハビリ場面をご紹介します。
〈話す事が恐くて人を避け続けたSさん〉
Sさんは20代の男子大学生です。
物心ついた幼少期に発吃し、
小学校に入った頃に
自分の吃音を自覚しました。
初期の中核症状は
音の繰り返しや引き伸ばしであり、
本人にどもっている自覚はありません。
進展して、
ブロックという
"急に呼吸が止まって
声が出なくなる"症状が
追加されると、
自分の喋り方がおかしい
と気付き始めます。
Sさんは、
音読や発表の度に
ブロックで思ったように話せなくなり、
クラスメイトから笑われたり、
「もっとちゃんと喋れ」と
大人からも指摘されるようになりました。
"どもってはいけない"
"どもりたくない"
そのように考え始め、
自分の発する音一つ一つを
注意深く監視し、
息遣いや
舌の使い方をコントロールし、
どもらずに言えそうな言葉を選別し、
できるだけどもらないように
喋っていました。
テクニックを毎回駆使して話すことは
相当な負担です。
次第にSさんは人と話すことに
多大な苦手意識を持つようになり、
話すことや話す場面を
避けるのようになりました。
Sさんは大学生になり、
就職活動をするにあたり
どうしても吃音の問題を避けられず、
私が勤務する病院の吃音外来を
受診されました。
〈半信半疑なまま間接法を始めることに〉
初回のセッションで、
Sさんは下ばかり向いて
私と目線が合わず、
声も小さく、
工夫や回避を駆使し過ぎて
回りくどい言い方が多くて
何が言いたいのか
よくわかりませんでした。
まず、
知識として、
吃音には中核症状と
進展すると追加される二次的症状があり
ブロックよりも
工夫や回避の方が
症状として重いという事を
説明しました。
そして、
吃音には悪化要因と改善要因があり、
悪化要因の増加を防止し、
改善要因を増やしていく必要がある。
という事を知ってもらい、
そのためには
進展段階をさかのぼって、
正常域まで戻る必要がある事を
説明しました。
Sさんは納得した様子でしたが、
イマイチ話がピンとこなかったようです。
それも無理ない事です。
進展段階をさかのぼるということは、
これまで一生懸命行ってきた、
回避や工夫を止める必要があるため、
「そんな事できる訳がない」
と当事者は考えます。
そこで、
工夫や回避は、
実は自分にとって利益になっていない
という事について説明します。
Sさんは、
工夫や回避を
これからも駆使し続けて
生きていきたい
わけではなかったので、
このあたりで
私の話が
おおよそ飲み込めたようでした。
最終的に、
「吃音の症状をコントロールする技術を
会得したいのではなく、
吃音に気兼ねなく
自分の思ったようにしゃべりたい」
という事を希望されたため、
間接法で言語訓練を
始めることになりました。
〈吃音の苦悩からの脱却に成功〉
間接法のセッションでは、
毎回同じような説明を
繰り返し行うこともあります。
Sさんを含め多くの方が、
初めは半信半疑な状態で
間接法を受けられます。
次第に
吃音の事が
気にならなくなってくると
「どうしてあんなめんどくさい
工夫や回避なんて
使っていたんだろう?」と
疑問を持つようになります。
Sさんは1年ほど通院を続けて、
「そういえば最近
吃音で何も困りませんね」と
話されるようになりました。
1年前のセッションの記録を
Sさんにも見返してもらい、
初めの頃に
どれだけ吃音の苦悩を抱えていたか、
それがいつのまにか
ほぼ解消されていることに
気付いてもらいました。
「吃音で困る事って、
もう何もありませんね」
とSさんが言っていた
言葉が印象的でした。
Sさんが実際に行った間接法は、
年表方式のメンタルリハーサル法です。
これは、
3年間の訓練で改善率が
72%と言われる方法です。
メンタルリハーサル法について
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