遺伝が原因!?幼児の吃音症のチェック方法と治療法の種類

こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。


私が勤務する病院では
吃音の外来を行っております。

もっとも多い問い合わせの1つが、

子どもをもつ親からのものです。


「子どもがどもるようになったが、どうすればいいのか?」

「様子を見ようと言われたけど、大丈夫なのか?」


我が子の事であれば
心配するのは当然と思います。


今回は、

実際に私が病院で
お話する内容について、

Q&A方式で書いていきます。

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〈Q:なぜ吃音になったのか?〉

吃音の直接的な原因は未だ不明です。

しかし、
昔から云われる

"親の育て方"

"育った環境"など、

これらの理由に
医学的根拠はありません


発達障害に
育て方の問題は
関係ない事と同じです。

決して
親や環境の責任ではありません


また、

”親の吃音が子供に遺伝する”

という考えもありますが、
これも正確ではありません。

何らかの遺伝要因があるとは
思われますが、

それだけでは吃音にはなりません。


統計的に、

吃音の人に子どもが7人いたら、
そのうち1人は吃音になるかもしれない

という程度の確率です。


遺伝的要因と
環境的要因が相まって、
発吃に至る

というものが、
現在最も有力視される原因論です。


親御さんは
わが子に吃音が出始めた原因を
必死に探そうとされますが、

犯人捜しをして
「あれが悪かったのでは?」
などと後悔する必要は

まったくありません。



〈Q:吃音かどうかチェックするにはどうすればいいのか?〉

まず、

音や語の繰り返しや
ブロックといった

中核症状が出現しておれば、

概ね吃音と考えていいでしょう。


チェックの種類としては、

・ブロックが出現しているか確認

・工夫を使っているか確認

この2点になります。


吃音には進展段階があり、

進展すると症状が足されていきます。

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まずチェックするポイントは、

”ブロックが出ているかどうか”


繰り返しや引き伸ばしだけなら
第1層

ブロックや
それに伴う随伴症状が出ていれば
第2層

となります。


ブロックが出現すると、
本人の吃音への自覚が生じます。

しかし、
第2層までなら本人は気にしていないので、
特に問題とはなりません。


次のチェックポイントとしては、

”工夫を使っているかどうか”

第2層の時に
「どもることは恥ずかしい」
「どもりたくない」
という意識が芽生えると、

工夫を使ってブロックから逃れようとします。

すると
発話の度に苦悩が生じます。

これが進展段階の第3層です。


私の場合、
小学校2年生の時に
吃音を理由にいじめられ、
工夫を使うようになりました。

第3層以上に進展すると
本人が苦悩を感じているので、
対応が必要になります



<Q:子供に吃音症が出始めたらどうすればいいのか?>

小児科や定期健診では

「ことばが発達しきるまで様子をみましょう」

と言われることが多いです。


これは、
ある意味正しい判断です。


幼児の吃音症の場合、

自然治癒する確率が約5割となります。


仮に
小児用の吃音訓練を実施した場合、

治癒する確率が約7割になるそうです。


訓練を受けると治癒率が2割増える
ということですね。


ただ、
言語発達が完成するのは
だいたい6歳頃とされており、

吃音訓練の中には
変な構音方法を指導するものもあるので、

発達中の言語に過干渉する事は
良くないとも言われています。


私のような
間接法で臨床を行う者の
考えとしては、

”本人が
自然で無意識な発話ができるように
環境を調整した上で
様子をみる”

としています。


幼児の吃音の治療法にもいくつか種類がありますが、
だいたい直接法と間接法に分かれます。

直接法は直接声を出して練習する方法です。

間接法は声に出して練習はせず、
行動を変えます。


私が病院で行っている環境調整法は
間接法であり、

吃音の子ども本人に
直接アプローチすることはしません


本人が
自分の思った通りに意思表出できるように

家庭内の環境を調整するように
親御さんに指導していきます。


調整する内容はいたってシンプルです。

・こどもの発話への干渉はすべて止める

・発話を強制することも止める

・こどもが安心して話せる時間を確保する

・命に係わるケガや火事の恐れがある事を除き、こどもの好きなように振舞わせる

・躾をすべて止める

これだけです。


吃音が生じているこどもは

「自分の感情を素直に表現する」

「自分の意思表示が無条件に受け入れられる」

といった経験が不足しがちです。

これは吃音を悪化される要因になります。


したがって、

「自分の感情を素直に表現する」

「自分の意思表示が無条件に受け入れられる」

という環境を用意することで、

これらの経験値を増やしていき、

吃音の改善を図るというわけです。


と言っても、
これが親にとってかなりのストレスになる事は
重々承知しています。

(一応、私も父親ですので…)


よって、

STの仕事は
環境調整を行う親御さんへのフォローです。

特に
母親役の人が
独りで環境調整を行うと
ストレスですぐに爆発します

そうならないように
私のようなSTがいるのです。



<まとめ>

いかがでしたでしょうか?


うちの病院は
小児科ではありませんが、

そんな病院にさえ
問い合わせが来るほど、

吃音を診る病院は少ないです。

ネット上には
相変わらず様々な情報が出回り、

本当に欲しい情報が
見つかりません。


そんな現状を少しでも改善するため、

病院ではできない
ネット上への情報発信を、

このブログで行おうと考えました。


少しでも、
読者の方のお役に立てれば
うれしい限りです。



言語聴覚士に相談したいことがございましたら、
お気軽にお問い合わせください。


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その他の目的、外部の第三者に提供することは一切ございません。



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