吃音は何が辛いの?当事者が語る吃音の本当の辛さとは?
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
”どもり”ということばを聞いたことがありますか?
「たたたたたたまご」と
言い始めの音を繰り返す。
「たーーまご」と
音を不自然に引き伸ばす。
「っっっt、たまご」と
急にことばが詰まって声がでなくなる。
このような症状を
一昔前までは”どもり”と呼んでいました。
最近では、
”吃音”という呼び方が
一般的になってきたように思います。
もしかしたら、
あなたの身の回りに
そのような話し方をしている人がいるかもしれません。
もしかしたら、
あなたのお子さんが
そのような話し方をしていて
心配に思っているかもしれません。
もしかしたら、
あなた自身が
吃音の悩みを抱えているかもしれません。
吃音は未だ原因不明ですが、
医学的に分かっている事も多くあります。
〈吃音の症状とつらさ〉
吃音には大きく分けて
2つの症状があります。
自分の意思とは関係なく出現する
いわば”ことばの言いづらさ”です。
「たたたたたたまご」という”繰り返し”
「たーーまご」という”引き伸し”
「っっっt、たまご」という”ブロック”
これら3つのことばの言いづらさが
吃音の中核症状と言われています。
一番苦しいのは
ことばが詰まって出てこない
”ブロック”です。
繰り返しや引き伸ばしは
しゃべっている本人には何の負担もないので
ほぼ気になりません。
幼児の吃音のほとんどは
この症状が主なため、
本人に吃音の自覚がない場合が多いです。
ところがブロックの場合、
話そうとすると、
急に喉に鍵がかかったように
声がでなくなります。
まさに
喉に何か詰まった感覚です。
呼吸も何もかもすべてが止まります。
とにかく
言いたくても
文字通りことばが出ないのです。
ブロックは
自分の意志とは関係なく出現します。
精神論ではどうにもなりません。
〈ほんとうに辛い症状は工夫や回避〉
ブロックは確かに苦しい症状ですが、
当事者にとって
本当の意味でつらいのは
ことばの言いづらさとは別の
もう一つの症状です。
それが、
自分の意思で症状を隠そうとする
”工夫や回避”です。
工夫は、
文字通りどもらないように話すための様々な工夫。
回避は、
話す事自体や話す場面を避ける症状です。
この症状は
「どもってはいけない」
「どもりたくない」
という意識に囚われていなければ
行いません。
わざわざ、
一つ一つの音を頭の中で分析し、
どもらずに言えそうかシュミレーションし、
どもらずに言えそうな言葉を選んで
どもらないように慎重に身体をコントロールしながら
それでもどもったらと不安と戦い、
どもりそうな場面を避け続ける。
そんな事を
毎回毎回
しゃべる度に
やらなければならないのでしょうか?
吃音の悩みを持たない人からすれば、
ただただ、
面倒なだけです。
工夫や回避を続ける理由は
どもりたくないからです。
どもることが辛いからです。
ブロック自体に
"辛い"という価値観は
本来ついていません。
吃音が悪化し、
どもること=良くない、恥ずかしい
という価値観が付いたことによって
工夫や回避を駆使してでも
どもらないようにしようと
努力し続けるのです。
そして、
殆どの場合
その努力は報われません。
どれだけ
工夫や回避を上手く使っても
必ずどもります。
その度に
自己嫌悪に陥るのです。
吃音に囚われると
自分自身が情けなく
何もできない人間であるように思えてきます。
吃音の本当の恐ろしさは、
自分自身を否定的に捉えてしまい、
人生を歪めてしまうことにあります。
〈まとめ〉
いかがでしたでしょうか?
世間では、
「吃音程度で何が辛いのか?」
「吃音を治せないのは自分の努力が足りないせい」
などの意見が
未だに根付いています。
そんな考えを耳にするたび、
吃音の当事者は
さらに吃音に囚われていきます。
私は専門家として
病院で吃音の診療を行っていますが、
私自身が吃音の当事者でもあります。
子供の頃、
吃音の悩みを抱えていた時、
ことばがつまる症状の
正体を教えてくれたのは
言語聴覚士の先生でした。
その先生に出会うまでに
いろんな情報を聞かされ、
何を信じて良いのかわかりませんでした。
私が子供の頃と違い、
今はネット上に様々な情報があります。
吃音に対する個人の見解も
不特定多数の人が発信しています。
結局何が正しい情報なのか、
当事者は
自分で判断しなければなりません。
専門家に相談したくても、
言語聴覚士は全国に約3万人いるはずですが、
そのうち、
吃音の相談に乗ってくれる言語聴覚士は
100人いるかどうかわかりません。
そのわずかな言語聴覚士に
どれだけの人が出会えるのでしょうか…
もし、
吃音など、
ことばの事で何か悩みを抱えていて、
どこに相談していいかもわからない状況なら、
私にご相談ください。
直接対処することが出来なくても、
然るべき機関に紹介等できるかもしません。
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