診療体験~ことばが詰まるだけじゃない!?吃音の基本症状を理解しよう~

こんにちは!

言語聴覚士(ST)の喜志です。


今回は、

病院で実際に行っている

吃音治療の体験シリーズです。


私が実際に

外来で当事者の方にお話ししている内容を

文字化したものですので、

病院で行われる吃音治療に興味のある方は

参考にしてください。

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<吃音の症状とは>


吃音の原因は未だ不明で、

ほとんどが幼児期から小学生の間に発症する

と言われています。


「何らかの遺伝的な要因と、

発吃し易い環境の要因とが重なると

吃音を発症する」

というのが、

今最も有力視されています。


吃音の症状や用語については、

世間一般で用いられるものや

当事者間での通称、

ネット上に散見される用語など、

混乱がみられます。


そこで、

私の場合は

専門学会で用いられる学術用語で統一します。



<基本的な症状は3つ>

吃音の基本症状は3つです。


・音節と語の部分の“繰り返し” 

  (世間一般における“連発”)

「みみみみかん」といったように、

音や語を不自然に繰り返してしまうことです。


・音節と語の部分の“引き伸ばし”

  (世間一般における“伸発”)

「みーーかん」と

音を引き伸ばしてしまうことです。


ブロック(阻止)

  (世間一般における“難発”)

「っm…m…ッみかん」のように、
声が詰まって呼吸も止まり、
口も動かなくなってしまうことです。

これらは話すときに現れる言語症状で、

自分の意思とは関係なく出現します。


また、

ブロックに伴って随伴症状”という、

自分の意思に反して

勝手に身体が「ピクッ」と動く症状も現れます。

随伴症状はブロックとセットで生じるので、

基本症状は
”繰り返し”
”引き伸ばし”
”ブロック”
の3つとされています。

3つの症状は吃音の中心となる症状で、

中核症状と呼びます。

狭い意味での吃音とは、

この中核症状のことを指します。



<自分の意思で行う二次的症状>

音を繰り返したり、

ブロック(声が詰まってしまう)のような

中核症状とは別に、

二次的症状があります。


二次的症状は、

ブロックから逃れようとして行う、

自分の意志による行動です。


いわば、

スラスラと話すためのテクニックです。

いろんなものがありますが、

まとめて“工夫”と呼びます。


例えば、

“解除反応”とは、

「声が詰まって出ない時に息を吐きながらしゃべる」など、

ブロックの状態から抜け出そうとして行う工夫です。


“助走”とは、

ブロックを防ごうとして、

目的の語の前に「えーっと」「まー」等を

意識して入れるような工夫です。


“延期”は、

ブロックが生じないと思えるまで、

話すことを先送りにする工夫です。


他にも、

言いたい言葉がブロックで言えないと思った時に、

同じ意味の他の言えそうな言葉に置き換えてしまう

“語の置き換え”など

様々な工夫があります。


しかし、

一生懸命に工夫を使っても、

ブロックを完全にコントロールすることはできず、

どもることが嫌で嫌で仕方なく、

話すことを止めたり、

話す機会を避けるようになります。

それを“回避”と呼びます。


ここで重要なことは、

「吃音の治療とは、

声が詰まって話が止まってしまうことを防ぐために、

スラスラ話すためのテクニックを駆使すること

と、ほとんどの方が考えている点です。


繰り返しますが、

ブロックから逃れようとして使う

“話すためのテクニック”は、

疫学的には”工夫”という

吃音の二次的症状なのです。


”話すためのテクニック”を

吃音治療のための手段と捉えるか、

”工夫”という二次的症状と捉えるかによって、

何をもって「吃音が治った」と捉えるかが変化します。


民間療法などと違い、

病院の診療は

疫学に基づくものでなければならないので、

”話すためのテクニック”

”工夫”という

吃音の症状として扱います。



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