診療体験~吃音の重症度を見極める!進展段階を理解しよう~
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
病院で実際に行っている
吃音治療の体験シリーズです。
私が実際に
外来で当事者の方にお話ししている内容を
文字化したものですので、
病院で行われる吃音治療に興味のある方は
参考にしてください。
<吃音は悪化する!?>
吃音の大きな特徴の一つは、
進展
つまり悪化する場合がある
ということです。
吃音が悪化するステップは、
進展段階という
4段階に分かれています。
悪化とは、
第4層に向かって進展することです。
逆に、
第4層から正常域に向かって遡ることを
軽減すると捉えます。
まず、
始めは正常域からです。
吃音になる前は
どんな吃音の人も正常でした。
「産声からどもっていた」
なんて人はいません。
ほとんどの人は、
幼児の時に第1層に至ります。
最初は
音や語の“繰り返し”や
“引き伸ばし”が生じます。
吃音が進展するにつれて、
症状が追加されていくと思ってください。
この時は
1ヶ月くらいの間隔で
吃る時期と吃らない時期があります。
本人は自分の吃音に気づかないので、
恥ずかしくもなく、
どもっても自由に話します。
第2層に進展すると
”ブロック”
つまり
声が詰まってことばが出てこない症状が
出始めます。
この段階でも、
初めのうちは、
本人は違和感を感じつつも、
どもりながら自由に話しています。
後半になると、
ブロックに伴って不自然に身体が動く”随伴症状”が加わり、
本人も自分の吃音を自覚し、
話し方に“注目”するようになります。
だいたい
幼児期から小学校低学年頃の
学童に多い印象です。
この時期に、
他の子と話し方の違いが
さらに目立ち始めるため、
周りの大人も「何とかしないと」と思い始めます。
「吃ってはいけない」という
吃音に対する否定的価値観を
周囲の人が持ち始める段階になります。
吃らないように”話すテクニック”を使った
その瞬間から第3層です。
周囲の人が
話すテクニックを教えなくても、
本人が自力で
話すテクニックを見つけることもあります。
第3層では、
常に吃音のことを考え、
自分の話し方や
吃りやすい音・言葉に
注目するようになります。
吃らないように、
毎回話すテクニックを使いますが、
これは“工夫”という症状です。
いくらテクニックを駆使しても、
吃るたびに自己嫌悪に陥ります。
吃音や話すこと自体に苦悩を抱える段階です。
話すこと自体が億劫になり、
話すことを避けたり、
話す必要がある場面を避けたりする
“回避”が加わると、
初期の頃の軽い中核症状は減って
重いブロックが多くなり、
第4層となります。
第4層は
症状が全て出揃った、
吃音の最終段階です。
この段階が本人にとって一番辛く、
吃音は深刻な問題だと捉えるようになります。
最重度では
引き籠りとなる場合もあります。
進展段階で重要なことは、
「“ブロック”よりも“工夫”や“回避”の方が症状として重度である」
ということです。
何を持って吃音が“治る”とするかは、
色々な考え方があります。
私の臨床では、
第4層から遡り、
正常域に達することを
“治る”と定義しています。
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