診療体験~なぜ吃音者は話す度に苦しいのか?発話行動について理解しよう~
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
病院で実際に行っている
吃音治療の体験シリーズです。
私が実際に
外来で当事者の方にお話ししている内容を
文字化したものですので、
病院で行われる吃音治療に興味のある方は
参考にしてください。
まずは基本をおさらいしましょう!
吃音の症状には、
音や語の”繰り返し”
音や語の”引き伸ばし”
ことばが詰まる”ブロック”
ブロックを隠そうとする”工夫”
話す事や場面を避ける”回避”
があります。
※詳しくはこちらの記事
吃音の重症度は
”進展段階”で表されます。
”悪化要因”が増すと
第4層へ向かって進展し、
”流暢性の要因”が増すと
正常域へ向かって遡ります。
※詳しくはこちらの記事
<吃音者が話す度に苦しむ理由>
発話に関する一連のプロセスを
”発話行動”と呼びますが、
実は、
いわゆる健常者と
吃音の人とでは、
”発話行動”に明らかな違いがあります。
※詳しくはこちらの記事
今回は、
”発話行動”について
詳しく解説していきます。
まず、
”健常者の発話行動”は、
内容を考えるだけです。
後は全部
頭の中で自動化されています。
「今話すべきかそうでないか」などは、
話す機能とは別の判断力になります。
話すプロセスは
頭の中で自動化されたものであり、
自分の意思でコントロールするもの
ではありません。
それに対して、
”吃音者の発話行動”を見てみましょう。
考えた内容を相手に伝えるには、
- 伝えようと考えなければいけない
- 何としても伝えよう、そのためには話さなければいけない、
- 話すためには言葉を出さなければならない、
- 言葉を出すためには声をだして口を動かして発音しなければ相手には伝わらない。
- だからうまく口を動かそう
と考えます。
そして同時に
- この○○の音は上手く声が出るか?
- 出なかったらどうしよう
- 苦手な音だ
- また声が詰まったら変な人だと思われるに違いない
- そうなったら恥ずかしい。何としても声を出そう
などと考えながら
自分の意思で
話すプロセスをコントロールしようとします。
そして吃ります。
話した結果を分析し、
「良かった」
「だめだった」
と一喜一憂します。
比べてみると、
健常者では「手段」であった
話すプロセスの部分が、
吃音者の場合は
「目的」に変わってしまいます。
本来、
無意識の内に自動ではたらくプロセスを、
自分の意思でコントロールしようと
頑張っているわけです。
普段から頭の中で
これだけの処理を行っているので、
当然オーバーワークです。
そして、
健常者にとっては全て不要な処理です。
吃音の人が話す度に苦しむ理由は、
”発話行動”にあります。
吃音者といえど、
常日頃どもっているわけではありません。
どもる時と
スラスラ話せる時がありますが、
スラスラ話せている時は、
頭の中で
健常者と同じ発話行動をしている時です。
これは、
最近の脳画像の研究でも
証明されています。
吃音者でも
常に吃音者の発話行動をしている
わけではありません。
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