診療体験~声に出すだけじゃない!意思表出のプロセスについて理解しよう~

こんにちは!

言語聴覚士(ST)の喜志です。


今回は、

病院で実際に行っている

吃音治療の体験シリーズです。


私が実際に

外来で当事者の方にお話ししている内容を

文字化したものですので、

病院で行われる吃音治療に興味のある方は

参考にしてください。

1067341_s.jpg


そもそも、 

コミュニケーションとは

どういったものなのでしょうか?


難しい話は抜きにして、

”自分の考えを相手に伝える”

という点で考えてみましょう。


吃音の当事者は、

「自分の考えを相手に伝えること」を

「声に出して話すこと」だと思いがちです。


声に出して話すことを

”コミュニケーション”

”発話”

と捉えています。


しかし、

学術的にみると

”発話”とは

複数の意思表出過程の

通過要素の一つなのです。



こちらの図↓をご覧ください。

意思表出.jpg

※都筑澄夫「間接法による吃音訓練 自然で無意識な発話への遡及的アプローチ ー環境調整法・年表方式のメンタルリハーサル法―」より抜粋(三輪書店 2015/9/5発行)


まず、

もっとも基礎となる

自分の①「感情、情動」があります。


この①「感情、情動」は、

「喜怒哀楽」という形で

直接意思表出される場合もありますし、

⑥声に出して「話し」たり、

⑦身体を動かして「直接行動」

表出する場合もあります。


あるいは、

⑤「喜怒哀楽」と同時に、

⑥声に出して「話し」たり、

「直接行動」で表したりする時もあります。


⑥声に出して「話し」ながら、

「直接」身体で表現する

場合もあります。


これら全てが

”コミュニケーション”

自分の考えを相手に伝える手段です。


私たち人は、

普段からこれらを

当たり前のように駆使しています。


「自分の考えを相手に伝えること」とは

「声に出して話すこと」

という考えは誤解です。




もう一つ、

重要なことがあります。

⑥声に出して「話す」場合は、

まず①「感情、情動」を通して、

「思考」し、

③頭の中で「発話」行動を起こして、

初めて⑥声に出して「話す」という形で

表出されます。


つまり、

③「発話」だけが

単独で意思表出の手段なることは

ありません。


同じように、

「直接行動」も、

「感情、情動」

「思考」→

④頭の中で「行動」が伴って、

初めて実現します。



このように、

”コミュニケーション”とは、

自分の「感情、情動」を

複数の手段を用いて

相手に伝えることと言えます。


全ての大元は「感情、情動」であり、

それを明確にする過程として

「思考や意思」があります。


吃音の当事者の中には、

「スラスラ発話ができれば、

コミュニケーションは全て上手くいく」

と考えている方もいますが、

それは誤解です。


③「発話」や

⑥「話す」を

いくら流暢にしたところで、

①「感情、情動」を

相手に伝える経験が

十分で無ければ、

コミュニケーションはうまくいきません



私が臨床で目指す

”コミュニケーションの成功体験”とは、

意思表出のいずれの手段を用いても、

自分の①感情、情動を

相手に伝える事に成功する

という体験です。



この記事が役立ちましたら、
よろしければ
ご意見を
お聞かせください。

アンケートはこちら↓↓↓





記事の内容へのご意見・ご質問や

個別のご相談等がございましたら、

メールにてお問合せください。


こちらをクリックするとメールフォームが開きます。  


※ご入力頂いた個人情報に関しましては、

お問合せへの回答を目的としてのみ使用します。

その他の目的、

外部の第三者に提供することは一切ございません。 

お気軽にお問い合わせください。



【成人吃音の診療体験シリーズ一覧】

〇ほとんどの方が「吃音=ことばに詰まる」だと勘違いしています。

ことばに詰まる頻度が少なければ吃音は軽いと勘違いしていませんか?

〇進展段階を知っていると、吃音の実態がよくわかります。

自然に悪化はしていません。吃音を悪化させる要因を知っていますか?

吃音は”ビーカーの中に入った水”です!?

吃音の人は頭の中の行動から”すでにどもっています”

健常者と吃音の人の発話行動はこれだけ違う!?

「コミュニケーション=声に出して話すこと」と思っていませんか?

〇自分が本当に望む目標に見合った訓練方法を選択しましょう!

〇私が病院で行っている訓練方法について解説します!

〇日常生活を送りながら、健常者と同じ発話行動の経験値を増やします!

RASSによる間接法は二段構えのアプローチです!

〇薬と同じでコツコツ続けてこそ効果が表れます!

〇まず自分が陥っている現状を整理しましょう。

〇皮肉なことですが、これまでやってきた努力が実現した結果です。

〇まず自分の行動を変えて、進展段階を遡りましょう!

〇価値観と事実は違います。それを確認してみましょう。

〇最終目標は健常者と同じ状態に”戻る”ことです。

〇最初は”だまされた”と思って続けてみてください!

この記事へのコメント