診療体験~声に出すだけじゃない!意思表出のプロセスについて理解しよう~
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
病院で実際に行っている
吃音治療の体験シリーズです。
私が実際に
外来で当事者の方にお話ししている内容を
文字化したものですので、
病院で行われる吃音治療に興味のある方は
参考にしてください。
そもそも、
コミュニケーションとは
どういったものなのでしょうか?
難しい話は抜きにして、
”自分の考えを相手に伝える”
という点で考えてみましょう。
吃音の当事者は、
「自分の考えを相手に伝えること」を
「声に出して話すこと」だと思いがちです。
声に出して話すことを
”コミュニケーション”
”発話”
と捉えています。
しかし、
学術的にみると
”発話”とは
複数の意思表出過程の
通過要素の一つなのです。
※都筑澄夫「間接法による吃音訓練 自然で無意識な発話への遡及的アプローチ ー環境調整法・年表方式のメンタルリハーサル法―」より抜粋(三輪書店 2015/9/5発行)
まず、
もっとも基礎となる
自分の①「感情、情動」があります。
この①「感情、情動」は、
⑤「喜怒哀楽」という形で
直接意思表出される場合もありますし、
⑥声に出して「話し」たり、
⑦身体を動かして「直接行動」で
表出する場合もあります。
あるいは、
⑤「喜怒哀楽」と同時に、
⑥声に出して「話し」たり、
⑦「直接行動」で表したりする時もあります。
⑥声に出して「話し」ながら、
⑦「直接」身体で表現する
場合もあります。
「自分の考えを相手に伝えること」とは
「声に出して話すこと」
という考えは誤解です。
⑥声に出して「話す」場合は、
まず①「感情、情動」を通して、
②「思考」し、
③頭の中で「発話」行動を起こして、
初めて⑥声に出して「話す」という形で
表出されます。
つまり、
③「発話」だけが
単独で意思表出の手段なることは
ありません。
同じように、
⑦「直接行動」も、
①「感情、情動」→
②「思考」→
④頭の中で「行動」が伴って、
初めて実現します。
このように、
”コミュニケーション”とは、
自分の「感情、情動」を
複数の手段を用いて
相手に伝えることと言えます。
全ての大元は「感情、情動」であり、
それを明確にする過程として
「思考や意思」があります。
吃音の当事者の中には、
「スラスラ発話ができれば、
コミュニケーションは全て上手くいく」
と考えている方もいますが、
それは誤解です。
③「発話」や
⑥「話す」を
いくら流暢にしたところで、
①「感情、情動」を
相手に伝える経験が
十分で無ければ、
コミュニケーションはうまくいきません。
私が臨床で目指す
”コミュニケーションの成功体験”とは、
意思表出のいずれの手段を用いても、
自分の①感情、情動を
相手に伝える事に成功する
という体験です。
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