診療体験~吃音訓練のパラダイムシフト!?メンタルリハーサル法とは?~
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
病院で実際に行っている
吃音治療の体験シリーズです。
私が実際に
外来で当事者の方にお話ししている内容を
文字化したものですので、
病院で行われる吃音治療に興味のある方は
参考にしてください。
ただし、
今回の記事で紹介する訓練法は
絶対に自己判断ではやらないでください。
RASSによる吃音訓練は、
日頃の生活で
”吃音への注目、工夫、回避を止め、
否定的な感情に浸ることを防止する”
ことと、
”年表方式によるメンタルリハーサル法”
の2段構えで行います。
※詳しくはこちらの記事
<吃音訓練のパラダイムシフト>
従来の吃音訓練は、
「いかに吃音の症状をコントロールするか」
というものが主流でした。
「コントロールした流暢な話し方で
思った通りに話していこう!」
というものが、
吃音の治療とされていました。
メンタルリハーサル法は、
そのような従来の訓練法とは、
まったく異なる方法です。
簡単に言うと、
コミュニケーションの疑似体験です。
実際に声を出して練習するのではなく、
コミュニケーション場面を
頭の中に描いてイメージします。
そのイメージの中では、
吃音をまったく意識することなく、
症状をコントロールしようともしません。
自分の思ったように実行し、
その目的が達成される場面を
イメージします。
メンタルリハーサル法で
イメージする場面は、
・感情を自由に出す
・自分の意志や考えを自由に出す
・自然で無意識な発話行動を実行できる
・必要な行動は恐れずに行動できる
これらの条件を
満たす必要があります。
「なんだ、当たり前の事じゃないか」
と思う方も
いらっしゃるかもしれません。
しかし、
吃音の発話行動では
健常者にとっての”当たり前”が
成り立たないのです。
吃音者にとっての
コミュニケーションの”当たり前”を
健常者の”当たり前”で
上書きしなければならないのです。
心理学用語で
このような方法を脱感作
といいます。
メンタルリハーサル法では
脱感作を起こすイメージ場面を
対立内容と呼んでいます。
対立内容では、
発話への注目や工夫、回避は一切禁止です。
自然で無意識な発話を練習するのに、
これらを行うと、
ただの吃音の悪化訓練となる恐れがあります。
RASSによる訓練を行っている病院では、
リスク管理のため
対立内容はすべて言語聴覚士が作成しています。
当然、
私の臨床でもそうしています。
吃音の当事者が
勝手に作ったイメージで
吃音を悪化させても
私達は責任をとれないからです。
この記事を読んでも
興味本位では
絶対にやらないでください。
<メンタルリハーサルは過去の場面から>
正式名称の”年表方式”というのは、
吃音者本人が体験した場面を
幼児期から現在の年齢まで
年表に従って
メンタルリハーサルを行う
という意味です。
最初は幼児期の場面から始めます。
いきなり現在の場面から始めると、
恐れの記憶が強すぎるため、
自然で無意識な発話をイメージできないからです。
もし
あなたが吃音の当事者であれば、
たとえば、
今、電話や人前で話す場面をイメージして、
吃音へ注目せず、
発話のテクニックや回避も
一切行わずに話せますか?
したがって、
恐れの生じにくい
幼児期の場面から始めて、
徐々に慣らしながら
現在の年齢へ近付けていきます。
<メンタルリハーサル法の流れ>
メンタルリハーサル法は、
基本的に毎晩寝る前に
ご自分で行ってもらいます。
私の病院の外来では、
訓練室では
現在の状態を評価しつつ、
新しい対立内容を作成してお渡しし、
持って帰って
メンタルリハーサル法を実施してもらい、
だいたい1ヶ月後ぐらいに
再度来て頂いて
実施状況を確認する。
そして、
また新たな対立内容を作成して
お渡しする。
といった流れを
繰り返す形になります。
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