診療体験~なぜ自分の吃音は悪化したのか?話すためのテクニックの正体~

こんにちは!

言語聴覚士(ST)の喜志です。


今回は、

病院で実際に行っている

吃音治療の体験シリーズです。


私が実際に

外来で当事者の方にお話ししている内容を

文字化したものですので、

病院で行われる吃音治療に興味のある方は

参考にしてください。

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まずは基本をおさらいしましょう!


吃音の症状には、

音や語の”繰り返し”

音や語の”引き伸ばし”

ことばが詰まる”ブロック”

ブロックを隠そうとする”工夫”

話す事や場面を避ける”回避”

があります。


※詳しくはこちらの記事

〇ほとんどの方が「吃音=ことばに詰まる」だと勘違いしています。


吃音の重症度は

”進展段階”で表されます。

進展段階の表.jpg

”悪化要因”が増すと

第4層へ向かって進展し、

”流暢性の要因”が増すと

正常域へ向かって遡ります。


※詳しくはこちらの記事

ことばに詰まる頻度が少なければ吃音は軽いと勘違いしていませんか?

自然に悪化はしていません。吃音を悪化させる要因を知っていますか?


<スラスラ話すテクニックの正体> 

第3層、第4層の人は、

スラスラ話すためのテクニックを駆使します。

テクニックはすぐに効果が現れ、

一時的にブロック(声が詰まって口が動かない)が出にくくなります。

これを「即効性」があるといいます。


その時は、

「これで治った」

と思いがちです。


しかし、

テクニックの効果は数日から数ヶ月ぐらいです。


最初のうちは真新しさから、

音や話すことや、

自分の緊張等から注意が逸れます。


これは注意の切り替えで、

吃音者が話す時に

自分の状態や吃音、発話に注目する

”吃音者独特の行動”

から一時的に解放されます。


しばらくして

慣れてくると、

そのテクニック自体に注意が向かなくなり、

「吃音者独特の行動から自分の注意が逸らされる」という

効果が無くなります。

すると、

またどもる状態に戻ってしまいます。


一時的であっても

「辛い状態から抜け出し、吃音から開放された」

という感覚が、

“テクニックを使って吃音の症状をコントロールすること”

と結びつき、

ますます話すためのテクニック探しに

のめり込んでいきます。



実際、

私も学生の頃は第4層で、

話す度に話すためのテクニックを使っていました。



小学生の頃、

友達の名前を呼ぶときに

右足を一歩強めに踏み込んで、

それと同時に話すと

声に詰まらずにスラっと言えました。

その感覚が嬉しくて、

しばらく吃音に悩むことなく話せました。

しかし、

一か月ほどして、

また以前と同じようにどもるようになり、

落ち込んだものです。

そして、

また新しいテクニックを編み出し、

それを繰り返しました。


新しいテクニックを何度使いこなしても

いずれ効果はなくなる。

一度使ったテクニックは、もう効果がない。


結局それでは

私の吃音は何も変わりませんでした。




<吃音は”行動”の結果を反映する> 

「うまく話すためにはコントロールするものだ」

と思いがちですが、

この話すためのテクニックは、

学術的には“工夫”という

吃音の発話症状です。


ブロックしないように、

健常者のように

スラスラ話そうと努力してきましたが、

健常者はこのような発話行動はしていません。

話す時に話すためのテクニックを駆使するのは、

吃音の人独特の行動です。



※詳しくはこちらの記事

吃音の人は頭の中の行動から”すでにどもっています”

健常者と吃音の人の発話行動はこれだけ違う!?



健常者のように

スラスラ話せるようになりたい

と思って行ってきた「吃音の人独特の行動」は、

本人の願いとは逆に、

健常者の話し方から

どんどん離れていく行動です



吃音は、

本人の願いよりも、

実際に行った行動の結果を実現します。


今まで、

本音では「スラスラ話せるようになりたい」

と思っていましたが、

実際に行っていた行動は

「吃音の人独特の行動」でした。


吃音はその通りに実現しましたので、

困っている現在があります。




ここで重要なことは、

今までの努力は無意味ではなく、

方向性が誤っていただけということです。


実際に行う行動を、

本人の願いと同じ、

健常者と同じ発話行動に変えてやれば、

吃音はその結果を実現します。




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