診療体験~進展段階を遡るにはどうすればよいのか?~
こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。
今回は、
病院で実際に行っている
吃音治療の体験シリーズです。
私が実際に
外来で当事者の方にお話ししている内容を
文字化したものですので、
病院で行われる吃音治療に興味のある方は
参考にしてください。
まずは基本をおさらいしましょう!
吃音の症状には、
音や語の”繰り返し”
音や語の”引き伸ばし”
ことばが詰まる”ブロック”
ブロックを隠そうとする”工夫”
話す事や場面を避ける”回避”
があります。
※詳しくはこちらの記事
吃音の重症度は
”進展段階”で表されます。
”悪化要因”が増すと
第4層へ向かって進展し、
”流暢性の要因”が増すと
正常域へ向かって遡ります。
※詳しくはこちらの記事
私の臨床では、
”吃音の改善”とは
進展段階を正常域へ向かって
遡る事と定義しています。
”吃音が治る”とは
進展段階を遡って
正常域に到達する事です。
進展段階のうち、
吃音で困っているのは
第3、第4層の当事者です。
第2層の当事者は
”どもっているけど困らない”状態です。
第3、第4層の方は、
第2層に戻るだけでも
生活上の問題を解決できます。
第4層の方が
第2層へ戻るには、
まず「回避」を止めることです。
回避を止めるだけで第3層に戻れます。
第3層の方は、
すべての話すための工夫を止めます。
今まで、
吃音を軽減するために
必要だと思っていた
“話すためのテクニック”は、
すべて“工夫”という吃音の二次的症状です。
自分にとっての利益にはなっていません。
その証拠に、
今まで努力してテクニックを使ってきたのに、
現在も困っていますよね?
ほんとうの意味で
吃音を軽減するには、
回避を無くし、
工夫を無くすことが必要です。
まず、
どもったかどうかを
振り返ることから止めていきましょう。
普段の会話で
「どもってしまった」
「どもらずにうまく話せた」
と振り返りそうになったら、
すぐに振り返ったイメージから離れてください。
振り返りをしている間は、
頭の中にその場面のイメージが描かれている。
その間、
吃音の悪化要因が増え続けます。
「うまく話せた」という振り返りも同じです。
ならば、
「考えないようにする」と思う方も
いらっしゃるかもしれませんが、
「考えないようする」という思考は
「考える」事と同じです。
「考えないようにする」と考えている時点で、
振り返りをやってしまっています。
もし振り返りをして
頭の中に嫌な場面のイメージが浮かんだら、
すぐ嫌でも嬉しくもない情景に
頭の中を切り替えましょう。
嫌でも嬉しくもない情景とは、
何の感情も湧いてこないイメージの事です。
例えば、
今目の前には何が見えていますか?
机はどんな模様ですか?
どんな音が聞こえていますか?
私達が、
実際に見ている風景や
聞いている音は、
本来そのような”どうでもいい情報”が
ほとんどです。
そのような”どうでもいい情報”に
頭の中のイメージを切り替えます。
人間は、
一度に1つのことしか処理できません。
目の前に見えている景色に集中している時は
他の場面が頭の中に入り込む余地はありません。
そのようにして、
吃音の考えから離れる行動を
少しずつ進めていきましょう。
第2層に戻ると、
吃音のことを忘れて生活できるようになります。
まだどもってはいますが、
発話努力がないので、
気にせず楽に話しています。
まず、
第2層まで戻ることが、
当面の目標だと思って下さい。
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