しかってはいけない!?吃音が出ている子どもの自信を育てる方法
このブログは、
「ことばの不自由さに困っている方」へ
「ことばの問題の専門家であるST」が
言語療法の情報をお届けする事を
目的としています。
この記事は、
「小児の吃音」について、
私が実際に
病院の外来で当事者の方にお話ししている内容を
ご紹介した記事になります。
私の臨床では、
「自然で無意識発話への遡及的アプローチ(RASS)」
の考え方に基づいて、
環境調整法を実施しています。
この方法は、
子どもを取り巻く環境を、
「吃音が悪化しにくく、治り易い環境」に整えて、
吃音が徐々に治っていくのを待つ
という方法です。
※詳しくはこちらの記事をご覧ください! ↓↓↓
本来の環境調整法は、
専門の臨床家の指導のもとで行う事が理想ですが、
この記事に上げたポイントを押さえるだけでも、
吃音の緩和を促すことができます。
環境調整法で整えるべき環境は、
「言語環境」
と
「養育環境」
の2つです。
今回は、
「養育環境」について
解説しましょう!
養育環境とは、
こどもが育つ環境全般のことです。
つまり、
生活全般にわたる調整を行っていきます。
具体的なポイントは
・押し付けをやめる
・しかるのをやめる
・しつけをやめる
・罰を与えない
・母子の気持ちのやり取りを増やす
という点です。
<一切の押し付けを取り除く>
「押し付けをやめる」とは、
簡単に言えば、
普段の生活ですべての
「~しなければならない」
をやめるということです。
「挨拶しなければならない」
「靴を揃えなければならない」
「片付けなければならない」
「いい子でいなければならない」
ふだん「~しなければならない」
と思っていることは
たくさんありますが、
ことばに出して言うことはもちろん、
態度や行動で表すのも止めます。
一切の押し付けを取り除いて、
本人の気持ちが出せるようにしていく。
それが環境調整の目的です。
<しかることも躾も禁止>
「しかる」や「躾」は、
いわゆる“一般常識”を
身に着けるための教育です。
このような”一般常識”は、
子どもが吃音症状を持たないのであれば、
正しいので、
大いに発揮する必要があります。
吃音症状を持たない、
“一般常識”を守る子どもは、
“いい子”です。
しかし、
吃音の状態にある
“一般常識”を守る子どもは違います。
それは、
“小さなおとな”です。
“いい子”
と
“小さなおとな”
の違いは、
自分の気持ちや意思を
自由に出した経験値の差です。
自由に気持ちや意思を出した経験の多い子は、
それだけ自我が強く、
自信を持っています。
しかし、
そうした経験が少ない子は、
自我が育ちにくくなります。
それは、
成長してから、
より大きな差を生みます。
大人になってから、
自分に自信を持つことは大変な作業です。
したがって、
親御さんには、
子どもが吃音の状態にある間だけは、
“一般常識”を一時的に外してもらいます。
子どもにとって“今”必要なのは、
“一般常識”ではなく、
自分に自信を持つ事だから、
という考えが環境調整の観点だからです。
普段の生活で当たり前に行っている躾をやめ、
可能な限り甘えさせます。
こどもにとっての心理的圧力を取り除き、
直接的な感情や意志表出を
いつでも出せるようにしてやります。
大人側は、
こどもの意思を受け入れ、
共感し、
感情の交流を行います。
当然これは、
親御さんにとって、
それまで普通にやっていたことを
禁じられるわけですから、
多大な負担になります。
実際の環境調整では、
ほかの家族の協力を求めたり、
STからの精神的フォローを受けながらやっていきます。
ただし、
例外的にしかってよい場合があります。
「生命に関わる重大な事故に遭わない」
や
「健康を保つ」
あるいは
「火事を出さない」
といった観点から、
しかることが必要な場合は、
どなりつけてでもしかってかまいません。
それ以外は、
全部自由にさせてあげてください。
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