慣れれば吃音は良くなるのか?言語聴覚士が教える吃音の話

こんにちは!
言語聴覚士(ST)の喜志です。

このブログは、
「ことばの不自由さに困っている方」
「ことばの問題の専門家であるST」
言語療法の情報をお届けする事を
目的としています。

今回は、
吃音の訓練方法について
お話します。

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私の臨床では、
「自然で無意識な発話への遡及的アプローチ(RASS)」
の考え方に基づいて、
吃音の訓練を行っています。

※詳しくはこちらの記事↓↓


成人の吃音に対しては、
年表方式のメンタルリハーサル法
対応します。

この方法は、
吃音の症状をコントロールするのではなく、
自然で無意識な発話の経験を積み、
吃音者意識からの脱却を
目指す方法です。

※詳しくはこちらの記事↓↓


今回は、
実際の臨床で
当事者の方から
頂いた質問と
その回答について
ご紹介します。



<Q:上手く話せるようになったのは場面に慣れたからで、訓練効果ではないのでは?>

A:”慣れ”と”苦手”は違う。


「場面に慣れたから症状が良くなった」
という意見がありますが、
メンタルリハーサル法の初期に
この様な判断が起こりやすいようです。


「慣れ」について
考えてみましょう。

慣れは同一の現実場面を
複数回繰り返し体験して、
その場面での行動に
習熟し適応した行動が
とれるようになる事です。

では、
数十年生きてきた間に、
何百回とほぼ同じ場面を
経験していながら
慣れなかったのでしょうか?
何十回も電話をした経験があるのに、
それでも慣れなくて
ますます電話が苦手になったのでは
ないでしょうか。

つまり
同じ場面を
数多く経験するだけでは
良い方向に作用するとは限らず、
悪化する場合もあるのです。


「慣れ」と
「苦手」を
比較しますと、
同じなのは経験回数のみであり、
他はほぼ正反対です。

慣れるためには
場面に適した行動ができ、
その結果、
目標を達成したことが
重要です

そして
自己の評価が肯定的である
ことが必要です。
他人の評価が否定的であっても
自己の評価が肯定的であれば
良いわけです。

この評価に基づいて
肯定的感情が
場面の行動に
結びつくことになります。

この一連の行動が
繰り返されて
適応性の増大に結びつくのです。

これが「慣れる」
ということです。


苦手になっていく場合は
ほぼ逆の状態であり、
単に繰り返せば
常に慣れるのではありません。

繰り返すほど
苦手意識が強くなるのは、
「慣れない」経験を
している場合です


吃音において重要なことは、
この「慣れない経験」を
自動的に作動させる別の働きが
存在します。


したがって、
症状が減少したのは、
単に同じ場面を
複数回経験しただけの
問題ではありません。




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